私は原作漫画「金の国 水の国」のみならず、作者岩本ナオさんのデビュー作以来のファンなので、めちゃくちゃ厳しい目で見るぜ…と思いながら観た。
映画の感想というか、原作との違いの話をする。
同じだけどなんか違う
ストーリーは原作とほぼ同じだし、絵柄や色彩も原作の雰囲気のままなのだが、何か決定的に違う。
岩本ナオ作品の好きなところは、淡々としているのに突如強烈にロマンティックな表現が飛び出てくるところなのだが、この映画はわりとずっとロマンティックだった。
アニメ映画になるとあのテンポ感を出すことに苦心するよりも、思いきってロマンティックに振りきる方が表現の幅が広がるのかもしれないと、好意的に解釈すればそういう感じである。
映画ではすっかりナランバヤルがヒーローっぽくなっていたが、私は原作でのヒーローはサーラだと思っている。ナランバヤルはむしろヒロインである。
ラストの逃亡劇の描写の原作との違いは、ナランバヤルが一人きりになるタイミングがあるか否かである。
原作ではナランバヤルが一人になったあと、隠し通路のレバーを引こうとしてびくともしない、そこにサーラが「お手伝いいたしますわ」とサラッと現れ、「今日は大変でしたね」と言い、「力を入れてくださいっ」とナランバヤルの手をしばくのである。
このシーンでのサーラのヒーロー感が好きだ。
おそらくアニメでの動きを出すためとか、尺とか、テンポとか、色々な事情でそうなったのだろうが、映画では「怖かったけど愛する人を助けるために頑張って来ました」感が強くなっていた。
あと、細かいところだが、ムーンライトがレオポルディーネとの出会いを思い出す場面がなかったのが少し残念であった。
レオポルディーネがムーンライトの美しさを「誰かが砂漠に落とした宝石」に例える場面である。
この作品ではサーラが容姿を侮辱される場面があるように、「美しさ」もテーマのひとつであり、この描写も必要だったと私は思うのだが、全てカットでしたね、何故だ。
まとめ
とはいえ、原作のロマンティックさ、可愛らしさは存分に再現されていた。
観たあと爽やかな気分になる、よい映画だった。