空飛ぶ餃子

Aro/Aceのオタクです。映画、漫画の感想・考察(ネタバレ全開)

(内容に言及あり)映画「君たちはどう生きるか」感想

感想を書こうとしても、インコが頭を占拠してしまうけれど、なんとか頑張って書きたいと思う。

 

なぜこの映画をこんなに「怖い」と思うのか、考えている。

まず、私は妊婦の腹に触れる場面でここまで不穏な表現をする映画をかつて見たことがなかった。なつこさんが眞人の手を取り、あなたの弟か妹ですよと明かすところ、怖すぎて縮みあがってしまった。

怖いというと、眞人が火事の夢を見たあと、父親となつこさんを階段の上から見る場面も怖かった。なんであんなに怖い恋愛の表現ができるんだよ、怖くてギブアップしそうだったが何とかこらえた。

そもそも父親が母親そっくりの妹と結婚するというのが怖すぎる。なぜだかわからないが、私はこの「死んだ妻そっくりの後妻」というものが怖くて仕方ない。なんでこんな怖い始まり方なんだ怖い。

それにしてもあの父親も絶妙に嫌味ですごい、学校に車で乗り付けるとかどう考えてもいじめられると思ったら案の定である。

その後眞人は自傷行為をするが、その時の血の表現も極めて怖い。

主人公が変な鳥に誘われて不思議な世界に行ったあとも油断できない。

老いたペリカンが死ぬ場面も背景の血の表現が怖いし、ずっとうっすら「死のにおいがプンプン」していて(主人公の眞人がそう言われていた)何とも不気味である。

わらわらを食べるペリカンや、燃えるペリカンとわらわら、なつこさんの産屋も何とも怖くて、これは人が産まれることへの得体の知れない恐怖を表現しているのだろうか、などと解釈した。

 

ところでインコたちは可愛いかった。包丁を持って食べようとしてくるのだが、鼻息が荒かったり包丁を研いでいたり、独特の愛嬌がある。「おまえには赤ちゃんがいないから食べる」と言われるところ以外は怖くない。いや怖いと言えば怖いが、子供のころ「注文の多い料理店」を読んで感じた怖さに似ていて、この怖さは嫌ではない。

 

しかし眞人は結局なつこさんを「母さん」と呼ぶし、ラストシーンで登場する子供の間抜け面を見るに、たぶん眞人は生まれてきた子供への恐怖はないのだろう。

そう、生まれてくると人間でしかないので、得体の知れない怖さはなくなるのである。