これは定期的にゴジラが暴れているのを見たい人間のために最適な映画であった。
ゴジラの暴れぶりがとても良かったので、ドラマ部分の微妙さはひとまず脇に置いておく。
印象的なのは下からゴジラを見上げるアングルである。今までのゴジラ映画というと、上からの視点が多かった印象があるのだが、今回のゴジラでは人間の目線が意識されていたように思う。
とくに冒頭の場面、この時点でのゴジラはまだ小さめサイズなのだが、このサイズ感が重要で、巨大すぎるよりもかえって恐ろしい。人間をくわえて放り投げるところなどは何だか『進撃の巨人』みたいで味わい深かった。
巨大になってからのゴジラも良い。電車をかじるところなどはニコニコしながら見た。ここはかなり好きである。
ゴジラそのものの姿以外で言うと、戦艦を返してくるところがかなり良かった。『ロード・オブ・ザ・リング』に、オークの軍勢がカタパルトで味方の首を投げ返してくる場面があるが、あれを思い出した。ちょっと違うか。
ゴジラの鳴き声も怒れる怪獣!という感じで良かったし、とにかくゴジラは良かったので、ゴジラを眺める目的には充分かなう。
問題はドラマ部分である。
いつもは自衛隊とか米軍がドンパチやっているイメージがあるゴジラ退治だが、今回は何と民間主導でゴジラ退治をするという。
シン・ゴジラみたいに怪獣大戦争マーチが流れなかったのも自衛隊がない時代の話だからなのだろうか。
民間主導というアイデアは面白いと思うが、戦艦や戦闘機(震電を映像化したい!!という気持ちが強かったんだろうなと思った)を使うし、メインは元軍人で、「戦争に行っていない」水島や民間の船の活躍はわりかし地味だった。どうにも「民間主導」を生かしきれていないように思う。
あと、反結婚主義者としては、血縁のない子どもを引き取った典子と、敷島との関係が婚姻に帰結すべきという流れには乗れなかった。典子が明子の「母親」でなくてもいいし、敷島が「父親」になる必要もないしではないか。
日本映画に珍しい血縁でも婚姻でもない関係だ!!と一瞬嬉しくなったのだが、まあそりゃそんなもんか。
ついでに言うと、典子が主人公の情動の引き金になるために存在しているかのように見えて(ラストシーンで実は生きていて。首筋に不穏な影が這うところも含め)、これも納得がいかなかった。
とはいえ俳優の演技は最善を尽くしていたと思う。現代っぽさと昭和っぽさのバランスが何だか不思議な感じではあったが。
しかし出演していると知らなかった山田裕貴を見れたのは良かった。やはり声が良い。
そういえばなぜかモブに橋爪功がいたのがうっすら気になっているが、あれは友情出演か何かなのか?
しかしせっかくこんなに狂暴でいい感じのゴジラを描けるなら、もう少しドラマ部分も頑張ってほしいものだ。今後に期待したい。